労務管理 2026年7月1日 約7分で読めます

年次有給休暇管理簿とは?義務・保存期間・記載事項を実務向けに解説

年次有給休暇管理簿は、年5日取得義務を「なんとなく管理する」ためのメモではありません。基準日、取得日数、取得時季を労働者ごとに確認できるように残す、使用者側の重要な管理資料です。

田中 さくら
ライター・社会保険労務士補助者|働き方・労務管理を専門に執筆

この記事について:本記事は、労働基準法および厚生労働省の年次有給休暇に関する公開情報をもとに、一般的な実務確認ポイントを整理したものです。会社ごとの就業規則、勤怠システム、労使協定によって運用が変わる場合があります。

まず結論:年次有給休暇管理簿で見るべきこと

年次有給休暇管理簿は、労働者ごとに「いつ年休が発生し、何日付与され、いつ何日取得したか」を追跡するための記録です。人事担当者にとっては、年5日取得義務の不足確認、残日数の問い合わせ対応、退職前の有給消化、労働基準監督署から確認を受けたときの説明資料として使います。

とくに重要なのは、基準日・付与日数・取得時季・取得日数・残日数を同じ労働者単位でつなげて見られることです。単に「残り8日」とだけ残しても、いつ付与された分なのか、年5日の義務対象なのか、時効が近い分なのかが判断できません。

実務上の最小セット
  • 労働者名または社員番号
  • 年休の基準日と付与日数
  • 取得した日付または期間、取得日数
  • 年度内に5日以上取得できているか
  • 繰越分と今年度分を含めた残日数

作成対象者と年5日取得義務との関係

管理簿は、年次有給休暇を付与した労働者ごとに作成します。正社員だけでなく、週所定労働日数や勤続期間の条件を満たして年休が付与されたパート・アルバイトも対象です。付与日数そのものを確認したい場合は、先に有給休暇の日数計算で勤続年数と比例付与の目安を確認すると整理しやすくなります。

2019年4月から、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者について、使用者は基準日から1年以内に5日以上取得させる必要があります。管理簿は、この「5日取得できているか」を後から説明できる形で残す役割も持ちます。

確認項目 見るポイント 関連するページ
付与対象か 6ヶ月継続勤務、8割以上出勤、比例付与の有無 有給休暇 日数計算
年5日義務の対象か その年度に10日以上付与されているか 有給残日数計算
期限内に取得したか 基準日から1年以内に5日以上取得済みか 経過日数計算

記載事項:何を書けばよいか

管理簿は様式名よりも、必要な情報を確認できることが大切です。勤怠システム、Excel、紙の台帳のどれを使っていても、基準日と取得状況が追跡できる状態にしておきます。

管理簿の項目例

項目 記録する内容 実務メモ
労働者情報 氏名、社員番号、所属、雇用区分 同姓同名や部署異動がある会社では社員番号が便利
基準日 年休を付与した日、または一斉付与日 年5日義務の1年カウントの起点になる
付与日数 その基準日に付与した年休日数 10日以上なら年5日義務の対象になり得る
取得時季 取得日、取得期間、半日・時間単位の区分 時間単位年休は5日義務への算入可否に注意
取得日数・残日数 取得済み日数、繰越分、残日数 給与明細や勤怠画面と照合できる粒度にする

保存期間と管理タイミング

年次有給休暇管理簿は、年休を与えた期間中およびその期間満了後3年間の保存が必要です。実務では、基準日ごとに年度を区切り、年5日取得義務の期限、繰越、時効を同時に確認できるようにしておくと運用しやすくなります。

基準日から年5日取得義務と3年保存を確認するタイムライン
基準日、年5日取得義務、管理簿保存を別々にせず、同じ台帳で確認できる形にします。

たとえば4月1日に10日付与した従業員なら、翌年3月31日までに5日以上取得できているかを確認します。付与日からの経過期間を確認したい場合は、経過日数計算日付計算で基準日からの期間を確認できます。


紙・Excel・勤怠システムの使い分け

管理簿は紙でなければならない、という意味ではありません。必要な情報を労働者ごとに確認でき、必要な期間保存できるなら、Excelや勤怠システムでも管理できます。ただし、システム上で過去データが見えなくなる、退職者データが削除される、半休や時間単位年休の換算が曖昧になる、といった点には注意が必要です。

管理方法 向いているケース 注意点
勤怠システム 人数が多い、申請承認と残数管理を一体化したい 退職者データ、過年度データ、出力機能を確認
Excel・スプレッドシート 少人数、既存の勤怠表と照合したい 誤入力、共有権限、バックアップ管理が必要
紙の台帳 現場単位で小規模に管理する 検索性が低く、紛失・転記漏れに注意

よくある管理ミス

年休管理で問題になりやすいのは、法定の付与日数を間違えることだけではありません。むしろ、基準日が複数ある、一斉付与に切り替えた、パートの労働日数が変わった、半休と時間単位年休が混在している、といった運用のズレで管理簿が追いつかなくなるケースが目立ちます。

  • 基準日と取得期限を別々の表で管理し、年5日義務の期限を見落とす
  • パートの週所定労働日数変更を反映せず、比例付与日数を更新しない
  • 半日年休と時間単位年休を同じ「0.5日」として扱い、義務対象の確認を混同する
  • 退職者の管理簿データを早く削除してしまい、保存期間を満たせなくなる
  • 繰越分と今年度分を分けず、時効が近い残日数を説明できない

残日数の概算を確認したい場合は、有給休暇 残日数計算ツールで今年度付与、繰越、取得済み、取得予定を分けて入力できます。正式な残数は会社の勤怠システムや就業規則に従ってください。


FAQ

必要です。年次有給休暇が付与された労働者であれば、正社員だけでなくパート・アルバイトも管理対象になります。週所定労働日数が少ない人は比例付与になるため、付与日数と取得日数を分けて確認します。

必要な項目を確認でき、保存期間中に閲覧・出力できるならExcelやスプレッドシートで管理できます。共有権限、バックアップ、退職者データの保存には注意してください。

年5日義務の対象かどうかに関係なく、年次有給休暇を付与した労働者については取得状況を管理できる状態にしておく必要があります。10日未満付与の労働者でも、残日数や取得時季を確認できるようにします。

年次有給休暇を与えた期間中と、その期間が満了した後3年間の保存が必要です。基準日ごとに管理年度を分けると、保存期限を判断しやすくなります。

参考資料・出典

  1. 厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト
  2. 厚生労働省「年次有給休暇
  3. 厚生労働省「年休取得管理簿に関するQ&A

この記事を書いた人

田中 さくら
田中 さくら

社会保険労務士事務所での補助業務を経て、フリーライターとして独立。労務管理・働き方改革・有給休暇制度を中心に、生活と実務に役立つ言葉で解説しています。